小学3年生まで、よくケンカをしていたことは以前書いた。この頃嫌いだったのが作文である。作文の中でも読書感想文が一番嫌いだった。何と言っても、本を読むことが嫌いだった。宿題の音読も嫌いだった。
本を読まないことを心配したのか、母親が伝記物語「二宮金次郎」を買って来た。これが面白かった。伝記物語を読むようになったが、本を買うお金が無いので、本屋で立ち読みをした。がり勉と思われたくなくて、図書室には行かなかった。小学生が読む伝記物語全集を、ほとんど本屋で立ち読みをした。本ばかり読んでいたお陰で、ケンカをしなくなった。更に国語の成績が上がった。作文を書くのも苦にならなくなった。母親の術中にはまってしまった。
この頃釣りをはじめた。近くに海が無いので、もっぱら川か、溜池である。ある月曜日の朝礼で、数名が壇上に呼ばれた。昨日、ため池で一緒に釣りをした仲間である。もちろんその内の一名は私である。嫌な予感が的中した。「昨日、釣りをした溜池は個人のもので、そこで釣りをして魚を持ち帰ったのは、泥棒だ!」と、みんなの前で怒られてしまった。溜池なんか、表札でもない限り、誰のものだか分からない。見つけて、学校に言いつけるなんて、とんでもない大人だと思っていたら、言いつけたのは、同級生だった。