「男女七歳にして席を同じゅうせず」を地で行く福島県の更に田舎のことである。中学生の男女が一緒に歩いているだけで不純異性交遊となるような町だ。また悪いことに彼女の親は町の実力者である。美女と野獣ならぬ姫と不良である。
当時、俺たちの旅というテレビ番組が流行っていた。中村雅俊が演じるカースケに憧れて、通学はいつも下駄を履いていた。先生にはいつも叱られていたが、雪の日も下駄で学校に行ったら、注意されなくなった。先生に注意されないと面白くない。ましてや雪の日に下駄は駄目である。足は冷たいし、下駄の歯に雪が詰まって歩きにくい。雪の日は長靴に限る。
ある日、履いていた下駄が真っ二つに割れてしまった。くだんの彼女がその下駄をどうしても欲しいと言うのであげた。次の日、彼女の親から電話があった。割れた下駄を寄こすのは失礼だ!家には不良と付き合っている娘はいない!という内容だった。会ったこともないのに、嫌われたものである。
2年生になり、クラスのみんなとは少し距離を置いて、あまり目立たないように大人しくしていた。そう思っていたのは自分だけで、かなり目立っていたらしい。不良っぽいところがいいのか、この頃ファンクラブができた。