学校では3歩以上移動する時は走れと言われる。3歩以上ということは、移動は常に走っていないといけない。
特に9月頃から異常に走らされる。毎年12月に宮島の弥山登山があるからだ。登山と言ってもトレッキングではない。2000段もある石段を駆け登る班対抗の競争である。班の平均タイムを上げるには走るしかない。
ある土曜日、待ちに待った上陸の日である。自分の名前が書かれた木札と上陸札を交換しなければ上陸ができない。ところが、肝心の上陸札が無い。代わりに「上陸札は古鷹山の頂上にある。班長」と書かれた紙が貼ってあった。上陸員整列まで時間が無い。嫌でも走らなければ間に合わない。古鷹山は江田島にある標高394mの山である。卒業までに何度、駆け登らされたことか…
弥山登山当日、江田島から宮島までは海上自衛隊の船で行く。観光ではない。ただ走るためだけに宮島に行くのである。班毎にスタートする。延々と石段が続く。スタートして暫くすると足が上がらなくなってくる。所々に教官がいて、歩くと怒られる。次に内臓を捨てたくなってくる。それでも走る。これでもかというくらい石段が続く。「あと50m!」教官の声だ。ゴールは目の前だ。最後は気力で走る。するとまた、「あと50mだ!」と別な教官の声。さっきの50mは、何だったんだ?