2年生になった。名札の色も赤から黄色になった。牛・豚とは言え、ゴミ・カスより一つ上がった。
でも、あまり嬉しくない。1年生が入ったとは言っても、入校教育期間中はお客様扱いである。そのため、2年生とは名ばかりで、やっていることは1年の時とあまり変わらない。特に4月は桜の時期で、朝の甲板掃除は桜の花びらとの戦いである。
1か月の入校教育期間が終わって、やっと1年生を朝の甲板掃除で使えると思っていた。考えが甘かった。1年生が戦力として使える日の朝から、2年生のファンシードリル訓練が開始された。ファンシードリルで有名なのは、防衛大学校儀仗隊である。私たちは、海上自衛隊少年術科学校儀仗隊である。朝の甲板掃除からは解放されたが、その時間、毎朝ファンシードリルの訓練である。
なぜか教官室に呼ばれた。班長から、「儀仗隊指揮官をやれ!3回位声を潰せば何とかなるだろう、明日の朝から陸奥の砲塔の横で号令調整をやれ!」と言われた。何とかとはなんだ?翌朝、言われた通り陸奥の砲塔に行った。なんと陸警科教官が待っていた。毎朝マンツーマンで、海に向かって号令調整をすることになった。「前へ進め、まわれ右、右向けー右…」声は直ぐに潰れた。これはいじめか?