10月1日は昇任日である。
長かった3等海士からようやく2等海士になった。
2等海士とは、高校を卒業して一般隊員として自衛隊に入ってくる人たちと同じ階級である。
3等海士の階級章に桜のマークが1つ増えただけだが、やっと人前に出せる階級章になったということである。
2等海士になって直ぐ、2年生と3年生は全員、千葉県の下総航空基地に行かされた。
航空基地とは言っても海上自衛隊の基地である。
10月末に朝霞駐屯地で行われる中央観閲式に参加するためである。
下総航空基地までは航空自衛隊のC-1輸送機で行ったように記憶している。
旅客機とは違ってすこぶる乗り心地が悪かった。
外も見えない。
着陸時の高度の下げ方もかなり乱暴だった。
酔いそうになってしまった。
後で聞いた話だが、驚かせようとしたそうだ。
はなはだ迷惑なことである。
下総航空基地では、朝から夕方まで行進訓練である。
M1ライフルを肩に担いで歩くだけだが、全員で手の振りと足並みを揃えるのはかなり難しい。
更に、難しいのは「軍艦マーチ」に合わせることである。
広大な会場に何台もスピーカーがあると、音が微妙にずれる。
風向きにも影響されるのである。
その年の観閲官は鈴木善幸内閣総理大臣だった。