中央観閲式が終わると、2年生には箱根保健行軍が待っていた。
行軍とは言っても、何キロも歩かされるわけではない。
一般的に言えば旅行である。
下総航空基地から観光バスで箱根に向かった。
自衛隊で旅行をさせてくれるとは驚きである。
七つボタンの制服を着ているので、どこに行っても目立つ。
これは広報活動の一環なのだろう。
夕方、旅館に到着。入浴を済ませ、大広間で夕食。
当然ながら、未成年なのでお酒は出ない。カラオケもない。
夕食後、20時に旅館の部屋の前で点呼が行われた。
その後、22時まで上陸が許可された。
上陸札を班長に渡して上陸。温泉街の夜。
22時までに帰って来いと言う方が無理と言うものである。
ただ、制服を着ているので、あまり無茶なことはできないが、気が付けば0時を過ぎていた。
旅館に帰ると、班長が玄関に居て入れない。
仕方がないのでもう一軒行くことにした。
2時頃に帰ったが、まだ班長が居る。
裏口も閉まっている。非常階段の扉も表からは開かない。
私たちの部屋は2階だったので、排水管を登ってベランダを伝って部屋に戻った。
今ではそんな芸当は出来ない。
次の日、旅館の玄関に行くと、上陸札が置いてあった。
班長からは何も言われなかった。