いよいよ部隊実習である。
学校から出られるのは嬉しいが不安だった。
初の部隊生活であり何と言っても船酔いが問題である。
更に階級は既に海士長である。
部隊に行くと、自分より年上の下級者がいる。
私の乗る艦は、長崎県佐世保を母港とする第2護衛隊群所属の「護衛艦はるな」に決まった。
「はるな」はヘリコプター3機搭載の当時海上自衛隊最大級の艦である。
横揺れを抑えるスタビライザーが4枚も付いていた。
教官からは「はるなで船酔いしたら海上自衛隊で乗る艦は無いと思え!」と言われていた。
部隊実習は7月1日からであるが、6月30日に後期課程の終業式があった。
終業式が終わるとそのままそれぞれの部隊に出発することになる。
終業式では、優等賞と努力賞の表彰もある。
私は4月から上陸止めの罰則を科せられているので全く関係がない。
と、思っていた。
ところが、終業式の会場である大講堂に行くと、2番目に名前が呼ばれた。
受賞者は成績順に整列することになっていた。
優等賞である。
入校以来初の受賞である。
本来は嬉しいはずが、気が重かった。
なぜなら部隊では優等賞を取った生徒が来ると思っているからである。
優等賞を取った生徒が船酔いでは話にならない。
ますますハードルが上がってしまった。