独身者は隊内居住が原則である。
そのため住民票も隊内の住所である。
ところが海上自衛隊は伝統的に独身者であっても下宿が許可されている。
「護衛艦はるな」での実習は3ヶ月間だけだ。
下宿が許可されるといっても、アパートを借りたりはしない。
先輩のアパートに居候させてもらうのである。
「護衛艦はるな」の電信室は14~5名ほどの隊員が配置されている。
そのうち3分の1は生徒出身者である。
つまり先輩である。
先輩のなかでも一番若い独身者のアパートと昔から相場は決まっている。
居候される先輩にとっては、はなはだ迷惑な話であるが、
生徒の宿命と思って諦めるほかない。
先輩が上陸の日にアパートに連れて行ってもらった。
途中布団屋に寄った。
先輩のアパートには布団が一組しかなかったのだ。
3ヶ月間のために布団を買うのはもったいないと思い、
タオルケットと薄手のマットレスを買った。
7月なのでこれで十分。
先輩から「なんでもいいから何か一つやらないことを決めろ。」と言われた。
全て出来るようになると結婚したくなくなるというのがその理由のようだ。
私は料理をしないことに決めた。
必然的にアパートでの料理担当は先輩ということになる。
先輩が作ってくれる料理はいつもそうめんと玉子焼きだった。