佐世保入港後上陸が許可された。
天気は雨。
行くところもないので、先輩のアパートに籠っていた。
先輩は当直でアパートには私一人だった。
艦にいれば3食夜食つきだが、上陸すると食事は自分で何とかしなければいけない。
先輩のアパートは高台にあり、近所に食堂はなかった。
唯一あったのが八百屋さんだ。
先輩から何か一つやらないことを決めろと言われ、
料理をしないことに決めたものの、
雨が強かったので食堂まで歩いて行く気にはならなかった。
仕方がないので作ることにした。
そうめんを探したが見つからなかった。
お米と炊飯器はあったが炊き方が分からない。
冷蔵庫の中は調味料ばかりで、おかずになるようなものは入っていなかった。
八百屋さんでパンを売っていたことを思い出して、雨のなか買いにいった。
ところが売り切れていた。
八百屋のおばさんに炊飯器の使い方を教えてもらった。
ご飯を炊くことにした。
おばさんから漬物と缶詰をすすめられた。
商売上手である。
福島の母親が雨を心配して電話を掛けてきた。
かなり強い雨が降ってはいたが、高台だったためあまり気にしていなかった。
テレビもつけていなかったので洪水に気づかなかった。
長崎大水害を知ったのは、翌朝、艦に帰ってからである。