護衛艦に乗艦してしばらくすると、艦内旅行というものをしなければならない。
旅行と言っても楽しいものではない。
紙を渡され、その紙に書かれた艦内の指定場所に行って、
ハンコをもらって来るというタイムレースだ。
しかも指定場所は複数あって、回る順番には書かれていない。
艦内を走り回るのでヘルメット着用である。
「護衛艦はるな」は全長153mもある当時は最大級の護衛艦である。
艦内には普段は行かないような倉庫などもたくさんあった。
場所をよく覚えていないと時間内に回り切れない。
一人でやるならまだいい。
少し前に乗艦した2等海士との競争だった。
年齢は一緒だが私は海士長だ。
みんなからプレッシャーを掛けられ負けるわけには行かなかった。
暇さえあれば艦内をうろついて場所を覚えた。
ところがやる日が決まらない。
前にも書いたが「護衛艦はるな」は出港がやたら多かった。
そのため艦内旅行をやる日が無かったのである。
仕方がないので出港中に紙を渡され、
暇な時に紙に書かれている場所に行って
誰かにサインをもらってこいということになった。
タイムレースはなくなってしまった。
海上自衛隊在籍中5隻の護衛艦に乗艦したが、
結局、一度も艦内旅行を経験しなかった。