館山での実習期間は3ヶ月。
その内の半分は体にできた赤い斑点のお陰で上陸止めであった。
館山城にも行っていない。
唯一思い出に残っているのは、なぎさ銀座である。
居候させてもらったアパートから近かったこともあり、よく遊びに行っていた。
翌年1月江田島の学校に戻った。
海曹課程3ヶ月が終わると卒業、部隊配属である。
海曹課程と言っても何か特別なことをするわけではない。
以前の学校生活と変わらなかった。
ただ学校を卒業できる嬉しさと、部隊配属の緊張と不安と期待があった。
学校に戻って早々、部隊配属の希望が取られた。
第1希望から第5希望まで書けるようになっていた。
私は、横須賀を母港とする艦隊所属の艦艇を大きい順に5隻書いた。
横須賀の艦艇に乗りたかったのである。
案の定、直ぐに班長に呼ばれた。
第1から第5希望まで全て艦艇を書いたのは、私一人だけだったらしい。
教官たちの間では、髙橋は艦艇に弱い。
船酔いをするということが常識となっていた。
その私が艦艇を希望した。
教官たちには理解できなかったようである。
教官室で「本当にいいのか?」と何度も訊かれた。
卒業すると3等海曹となり部下もできる。
どうせ船酔いするなら早いうちがいいと思っていただけなのである。