上陸員整列の30分前に先輩から問題が出されることは前回お話しした通りである。
ほとんどの問題は、30分以内に答えを出すことができた。
ある日、送信機の調整をする問題が出された。
送信機の調整は、よくやっていたので自信があった。
ただその日の問題は、普段使っている周波数ではなかった。
上陸員整列までには楽勝で終わると高を括っていた。
何度調整しても周波数が乗らない。
マニュアルを読み直してやってもダメである。
ついに上陸員整列時刻が過ぎてしまった。
その日は上陸を諦めて、夜まで調整をやったがダメだった。
しばらくして送信機のメーカーの人が定期点検で乗艦してきた。
メーカーの人に調整の仕方を訪ねると
「その周波数だけ、マニュアル通りにやると調整が出来ない」ということだった。
「マニュアルに書いておけよ!」と腹の底から思った。
数年後、高等科電信課程の履修を命じられて、
江田島の第1術科学校に入校した。
授業の中で、今回と同じ問題が教官から出された。
教官はこの周波数は調整不可と思っているらしく
「この調整ができた学生に優等賞をやる」と宣言してしまった。
「優等賞は貰った!」
調整を終えると、
教官から「髙橋、どうやって調整するか教えろ!」と言われた。
