護衛艦が大湊の岸壁を離れ、芦崎というゾウの鼻のような洲を過ぎると大湊湾に出る。
そして陸奥湾。
針路を北にとり平舘海峡を過ぎると津軽海峡である。
乗艦したばかりの頃、艦橋で手持ち無沙汰にしていた私に先輩が「正面に見える山は何だ」と訊いてきた。
北海道の山で聞いたことがあるのは、大雪山と社会の教科書に載っていた昭和新山だけである。
そのことを先輩に話すと「あれが昭和新山だ」と教えられた。
津軽海峡から昭和新山が見えるはずはないのだが、その時は信じてしまった。
ある時、洗たく上陸で父島に上陸した。
「護衛艦おおい」に水が無い話は以前したとおりである。
水が無いと手洗濯も出来ない。
そのため、長い航海になると洗たくをするためだけに上陸が許可されることがある。
たった3時間の半舷上陸である。
30分で洗たくを終わらせ、後は居酒屋に行って短期決戦をすることになる。
先輩が島寿司を頼んだ。
出てきたのは黄色いネタの握り寿司だった。
何の魚か先輩に訊くと「海亀」と教えられた。
亀の肉は黄色いと初めて知った。
それからというもの、いろいろな所で亀の肉は黄色いと自慢げに言いふらしてきた。
25年後、仕事で母島に行った。
民宿で亀の肉が出された。
亀の肉は牛肉のように赤かったのである。
