原付免許が学校に見つかってしまい、4月から3ヶ月間上陸止めという罰則を科せられていた。
ところが5月の連休中に学校に居られると学校側が困るらしい。
ということで、突然学校から出られることになった。
いい機会なので、その当時お付き合いをしていた彼女の両親に挨拶に行くことにした。
部隊実習に出ると、まとまった休みが取れるかどうか分からないので、今のうちにと思ったのである。
挨拶に行くと言ってもどうしていいかわからない。
ましてや彼女の両親からは不良と思われていた。
そこで、教官に相談をした。
親切な教官で、手紙の下書きをしてくれた。
私はその下書きを清書して、彼女の両親に送った。
手紙の内容は、ご挨拶にお伺いしたいということのほかに、自己紹介と、現在の状況やこれからの事などであった。
当日は制服を着てお伺いした。
門の大きさだけで圧倒されそうな武家屋敷のようなお宅だった。
来訪を告げると「会わない」という返事が返ってきた。
どうしようか迷ったが、勝手に玄関を開けて入ってしまった。
大きな玄関で、そこにお父さんが一人で後ろ向きに座っていた。
私は後ろ向きのお父さんに言いたいことだけ言って帰ってきた。
結局その彼女とは結婚出来なかったが、いい思い出である。