艦内居住はまがりなりにも快適とは言えない。
海曹士(下士官・兵員)のベッドはフレーム型の3段ベッドである。
上のベッドは階級の上位者が寝ることになる。
広さは寝袋位で、体の大きな人は寝返りをすると上のベッドに肩が当たる。
今の艦艇は2段ベッドのようだが、私は寝たことがない。
幹部(士官)の居住区は2段ベッドである。
士官室には士官室係が配置され、士官の食事の用意などをする。
通常は階級の下の者(2士、1士、士長)が士官室係になる。
私は、食卓係(シャリ番)だったので士官室係にはならなかった。
ある晩、士官室係に艦長室に呼ばれた。
艦長だけは個室である。
艦長室に入るのは電報を届ける時ぐらいで普段は入らない。
その日、艦長は上陸していて不在だった。
艦長室に行くと、士官室係が艦長のロッカーから高そうなウイスキーを出してきた。
艦内は禁酒のはずだが、なぜか3本も入っていた。
3本とも口が開いていた。
少しくらい飲んでも分からないと思い、士官室係2人と私とで少しだけ飲んだ。
あくる日、昨夜の士官室係が来て艦長のロッカーに鍵が掛かっているという。
士官室係によると艦長はいつも鍵を掛けていなかったようだ。
艦長からは何も言われなかったが、ばれていたようだ。