護衛艦「おおい」の全長は94mである。
100mを超えると波頭と波頭の間に艦が乗ってしまい、真中から折れるらしい。
つまり「おおい」は折れない分、落葉の様に波とともに揺れる艦ということである。
船酔いできついのは、タバコとご飯の炊ける匂いだ。
船酔いをしているときは、ご飯の炊ける匂いで食堂に近づくことができない。
お腹になにも入っていないと胃液を吐くようになり、胃に穴があいてしまうらしい。
そのため何でもいいから腹に入れろと言われるが食べられない。
出港前に、リンゴ数個と羊羹を購入しておいて、食堂に行けない時はベッドで横になりながら食べるのである。
船酔いしても自分の仕事はしなければならない。
船酔いしたからと言って慰めてくれる人はいない。
それどころか、艦が揺れ出すとわざと側に来てタバコを吸う先輩がいた。
そして「�橋、顔色が悪いぞ、どうしたんだ?」などと優しい言葉を掛けてくる。
それにつられて「船酔いしました」などと言うものなら即、鉄拳が飛んでくるのである。
その先輩によると、船酔いとは、船が揺れてから言うもので揺れる前に酔ってはいけないそうだ。
「船に強くなるのと酒に強くなるのは一緒だ」とか言われて、よく飲まされたが、これは全くの嘘である。