直径1㎝位のハンドレールに氷が付着して10㎝位の太さになる話は前回した通りである。
氷が付着するのはハンドレールだけではない。
海面から出ている部分には全て付着する。
氷の護衛艦である。
アンテナも例外ではない。
アンテナに氷が付着すると通信感度が悪くなる。
上甲板や上部構造物は鉄で出来ているので、ハンマーやスパナで叩けば氷は割れる。
アンテナは叩くわけにはいかない。
アンテナは濡れた雑巾(ウエス)で氷を融かすのである。
ある日、通信感度が悪くなりアンテナの氷を融かさなければならなくなった。
先輩と二人で作業をすることになった。
マストに登るにもラッタルに付着した氷を割りながら登らなくてはならない。
更に、マストから横に張り出したヤードに付いているアンテナの氷を融かさなければならない。
バケツに入れたお湯はマストに上がった時には水になっていた。
天気の良い日を狙って作業はするが、艦は動いている。
命綱を二本取ってはいても「今、落ちたら海だ!5秒と持たない、今、落ちたら甲板の上だ。死ぬな!」などと思いながら作業をしていた。
先輩はマストの少し広い所にいて、濡れたウエスを渡してくれる。
作業が終わると缶コーヒーを手渡してくれた。
マストの上で飲む缶コーヒーはとっても冷たかった。

