朝6時に起こされ、夜22時に消灯になるまで分刻みの毎日である。3分あればアイロンがけ、5分あれば手洗濯、3歩以上移動する時は駆け足といった具合だ。消灯になっても気が抜けない。夜中にいつ先輩が居住区に入って来るか分からないからだ。「発破」という鉄拳指導にわざわざ来るのである。私は子供の頃から寝つきがいいので、正に叩き起こされることになってしまう。「発破」が無い日は、朝まで熟睡である。寝ると直ぐに朝になる。朝になるとまた一日が始まる。お陰で寝るのが嫌いになった。とは言っても眠い!
1年生は、入校して一カ月間は上陸ができない。上陸というのは外出のことである。課業のない土曜、日曜は、古鷹山登山とカッター訓練である。登山と言っても山を走って登らされる。もちろんゴールデンウイークも、朝から古鷹山登山とカッター訓練である。
学校の敷地の周りには高さ2mの塀があり、その外側には、幅2m深さ2mの堀がある。更に塀の上には有刺鉄線が内側を向いて張り巡らされている。明らかに脱走防止である。逃げるためには海を泳ぐしかない。
ある日の夜、浴室掃除が終わって整列をしていた。浴室の入口の横に枯れかかったチューリップを見つけた。今までまったく気が付かなかった。こんな刑務所みたいな所にも花が咲くんだなーと思った。