刑務所のような学校生活の中で、唯一の楽しみは食事である。
献立は毎日変わる。
そのため、食堂に行くのが楽しみなのである。
献立が変わらないのは、金曜日のカレー位なものだ。
先に食事をした同期が、今日はうなぎの蒲焼だと話していた。
うなぎの蒲焼は、食べたことがなかった。
楽しみに食堂に行った。
なるほどうなぎの蒲焼だ。
大きくはないが写真で見たのと同じだ。
うまい。
人生初のうなぎの蒲焼だと一人感動していた。
自衛隊はなんていいところだと、単純に思った。
ところが、食堂に張り出されている献立表を見ると、アナゴの蒲焼と書かれている。
騙されたと思ったが、アナゴの蒲焼もうまかった。
予算の少ない自衛隊でうなぎが出されるはずもないのである。
ちなみに、うなぎの蒲焼を初めて食べたのは、学校を卒業してからである。
それまでは、アナゴの蒲焼をうなぎの蒲焼と思うことにして食べていた。
知らないということは、幸せなこともあるのである。
また、ある日アジフライが出された。
見た目もアジフライそのものである。
美味しかったが小骨が多かった。
献立表にはイワシフライと書かれていた。
アナゴの蒲焼もイワシフライも調理員の苦労の賜物である。
それ以降献立表は見ないことにした。