夏休みとは言っても、身分は国家公務員特別職である。高校生のように1か月半近くも休みがあるわけではない。ゴールデンウイークと土日の代休を合わせて、せいぜい10日である。しかし、海上自衛隊で10日も休めるのはおそらく学校にいる間だけだ。
お世話になった方や入隊時にご祝儀をいただいた方へのお礼、お盆なのでお墓参り、親戚廻りなどであっという間に時間が過ぎてゆく。入院していた祖母のお見舞いにも行った。「ご飯は腹一杯食べられるのか?」と何度も聞かれた。戦争中の記憶が残っているらしい。
ようやく同級生と会うことができた。男子はあまり変わっていない。女子は女性らしくなったように感じた。彼らの高校生活の話や女子の噂話は、羨ましい限りである。正に青春を謳歌していると言った感じだ。当時は、さだまさしの「関白宣言」が流行っていた。私は全く知らなかった。自分だけ取り残された感じだ。
同級生たちの日常は楽しさにあふれていた。私の日常は、男ばかりの隔離された世界だ。毎日が戦いである。同級生たちとあまりにも違う。みんなと違う世界に行ってしまったことを改めて感じた。なんだか寂しかった。だからと言って辞めて地元には戻れない。入れる高校がある訳でもない。親に迷惑をかけるだけだ。自分の居場所は海上自衛隊にしかなかった。