生徒生活の楽しみの一つに友人や家族、彼女からの手紙がある。当直の生徒が、休憩時間に教官室から手紙を受け取って来る。手紙が来ている生徒は、名前を呼ばれて配られる。年々来る通数が減っていくが、名前が呼ばれない時はガッカリである。メールが無い時代、部外者との連絡方法は電話か手紙しかなかった。
学校の敷地内には公衆電話が4台ある。しかし電話料金の安い夜の時間帯で、電話が使える自由時間は30分しかない。そのためいつも長蛇の列である。そのうえ先輩が後ろで待っている時などは、長電話など出来るものではない。電話中も気をつけの姿勢である。ましてや私などは地元が福島である。夜間料金とはいえ広島から掛けると100円硬貨が、あっという間に無くなってしまう。
そこで考えたのが1コールである。もちろん「元気です」の合図だ。自習時間前のわずかな時間に電話を掛ける。この時間帯は盲点だ。誰も並んでいない。1コールで電話を切るので電話代も掛からない。一石二鳥である。
一方の手紙は当時1通50円である。料金的にはいいが、返事を書く時間がない。それでも4年間、3週に2通程度は手紙を書いた。犠牲になったのは現国の授業である。国語辞書を出しておける唯一の授業だったからである。教官も見て見ぬふりで1度も注意されなかった。