厳冬訓練の次に待っているのは短艇訓練である。短艇とはカッターボートのことである。1月半ばから2月末まで、ほぼ毎日短艇を漕がされる。訓練の中頃に短漕競技があり、最終日には遠漕競技がある。
短漕は1マイル、遠漕は5マイルの班対抗の競争である。短漕は12名で漕ぐが、遠漕は1本のオールを2人で漕ぐので24名で漕ぐ。入校当初に短艇訓練があるが、これから始まる短艇訓練に比べれば遊びのようなものだ。
毎日漕いでいると手に豆が出来て潰れる。これが3回ほど繰り返される。カッターを漕ぐ時は白い作業服を着ている。オールを握る指の間から飛び散った血で、前で漕いでいる同期の背中が真っ赤になる。更に、お尻の皮がむける。漕ぐ時にはお尻を浮かせて体全体でオールを引く。オールを戻す時には漕手座に腰を降ろして腕と腹筋で押し戻す。そのためお尻の皮がむけるのである。酷くなると白い作業ズボンのお尻に血がにじんでくる。座学の時、鉛筆が握れない。教官にさされて椅子から立ち上がると、お尻が痛くて座れなくなる。最悪の訓練だ。
1年生の時は同期の水測班が短漕で優勝した。3年生の時は人数が足りず水測班、通信班合同で遠漕に1艇を出し優勝した。4年生の時は人数が足りないにも関わらず遠漕に2艇出して、1年生の班に負けてしまった。