2年生になる時に、通信に指定された話は以前にした通りである。
通信になると卒業までに3級無線通信士の国家資格を取得しなければならない。
モールス信号はもちろんだが、法規や無線工学といった試験科目があった。
今の試験制度は分からないが、当時は全て記述式で5問出題された。
そのため、試験の3か月ほど前から、過去の問題集を全て暗記させられる。
問題集は教科書位の大きさで1㎝ほどの厚みがある。
3か月間暗記だけに時間が使えるならいい。
他の教科や部活、訓練をこなした上で、限られた時間の中での暗記である。
ところが、私の隣の席の同期は、自習時間になると、毎日マンガ本を読んでいる。
暗記している様子は全くない。
最初から合格を諦めているかのようにも見える。
ある日聞いてみた。
すると「もう覚えた」と返事が返ってきた。
もう一度聞いてみた「いつ覚えた?」
すると「1回読めば頭に入る」と言う。
更に、教科書も1回読めばほとんど覚えるらしい。
そのため、普段の授業は復習だと言っていた。
恐るべき天才がいるものである。
そう思って周りを見ると、他にもマンガ本を読んでいる同期がいた。
私は休み時間まで使って、ようやく暗記した。
マンガ本を読んでいた同期は、もちろん合格である。