2年生以上は土・日上陸が許可される。3年生になると泊まりも出来る。4年生になると水曜日も上陸が出来る。1年生は、5月の連休が終わるまで上陸が許可されない。上陸とは外出のことである。
土・日の夜になると、上陸が出来ない1年生のために、同県人の2、3年生の先輩がお土産を持って来てくれる。川辺の焼きそばや、紅来軒の豚天・カレーチャーハンは定番だった。いい匂いがする。この時ばかりは、先輩がいい人に見える。
ところが、私のところにはお土産を持って来てくれる同県人の先輩はいなかった。同期がお土産を美味しそうに食べているのを、毎週羨ましく眺めていた。福島県出身の先輩はいないのかと思っていた。
5月の連休が終わって、いよいよ1年生にも上陸が許可される。初めての上陸は、教官たちに引率をされて呉の街に行った。2回目から本当の上陸である。1年生の上陸日に合わせて、先輩たちが県人会を開くのが恒例となっていた。私には関係がないと思っていたら、県人会を開くと連絡があった。先輩がいた!
指定された時間に、指定された場所に行くと、3人の先輩が待っていた。その中に隊甲板がいた。隊甲板とは掃除係りの親分である。4年生の中で最も関わりたくない人だ。鬼の隊甲板は福島県人だった。