海上自衛隊では2年に1度、柔剣道大会が行われる。
各部隊がチームを組んで出場してくる。
私が2年生の時の55年度大会は舞鶴だった。
突然、校長に呼ばれた。
校長の階級は海将補、昔の少将である。
2等兵が少将に呼ばれることはまずない。
柔道部の監督と一緒に校長室に行くと、「大丈夫か?」と聞かれた。
何のことか全く分からない。
柔道部の監督が「補欠ですから大丈夫です。」と答えていた。
海自柔剣道大会江田島チームの一人に選ばれたのである。
当時の江田島には国体選手二人の他にも猛者がいて、優勝候補の一角だった。
私は補欠に選ばれたことよりも、学校から1週間も解放されることの方が嬉しかった。
江田島から舞鶴までの移動日、用事があって、一日遅れて一人で舞鶴に向かった。
舞鶴に着いた時は消灯時間が過ぎていて、夕飯もなかった。
途中で食べれば良かったと後悔した。
実は舞鶴に着けるか不安で、食べる余裕がなかっただけだ。
翌朝、起きると隣のベッドで寝ていた同じ柔道チームの人が、
「髙橋うるさい!補欠は嫌だ!先鋒にしてくれ!って寝言で言ってたぞ。お前先鋒決定!」
寝耳に水とはこのことである。
補欠のはずが一夜にして選手、それも先鋒になってしまった。