当時「護衛艦はるな」は「護衛艦くらま」と二隻で第52護衛隊を編成していた。
同じ隊ということは、ほぼいつも一緒に行動するということである。
ある日、くらまの電信室に行く用事があった。
書類を持って出ようとすると、先輩に呼び止められた。
「くらまの電信長は、直ぐ千枚通しを投げるから気を付けろ」と言われた。
くらまにも同期が実習で乗っていた。
同期を呼び出して電信長が居ないことを確認してから、くらまの電信室に入った。
ところが、居ないはずの電信長がいた。
諦めて、挨拶をして書類を手渡した。
「直ぐに済むから待っていろ」と言われた。
電信室の隅の空いている椅子に座ろうとした。
その時、光るものが見えた。
とっさに避けた。
千枚通しが飛んできたのだ。
「若いくせに座るな。立っていろ!」と怒られてしまった。
書類を貰って帰ろうとした。
丁度お昼時で同期も一緒に電信室を出てきた。
今日は鯨のさしみと同期が話すのを聞いて食べたくなった。
献立は艦毎に違う。
本来は自分の艦で食べなければならない。
只々、鯨が好きだっただけである。
くらまの調理員長に頼み込んで食べさせてもらった。
その後も何度かくらまで鯨をご馳走になった。
今ではそんなことは出来ないだろうが、いい時代だったと思う。