護衛艦の中は独特の匂いがする。
海水と油が混ざった匂い。
ペンキの匂い。
船酔いの大敵である、炊飯やタバコの匂い。
何日も風呂に入っていない男の体臭。
なぜかイカの焼ける匂い。
その他もろもろである。
ずっと艦に乗っていると麻痺して気にならない。
初めて乗る人のなかには、この匂いだけで気分が悪くなる人もいるらしい。
現在の護衛艦は電子機器のある部屋ではタバコは吸えない。
当時の護衛艦はどこでもタバコが吸えた。
電信室内でも当然にタバコが吸えた。
通信機器がたくさんあるとは言っても全て真空管である。
煙の粒子が問題になるような機器ではないのである。
ある日、電信室に居ると、普段と違うゴムの焦げるような匂いがした。
他の人に訊いても誰も臭いと言わない。
どこから匂うのか探しても分からなかった。
電信室はヘビースモーカーが多かった。
タバコ臭かったので、みんな気が付かなかったのかもしれない。
私はタバコの匂いと、ゴムの焦げるような匂いに耐えかねて、隣のET室に逃げ込んでいた。
15分ほどして「バン」という大きな爆発音がした。
通信機器が爆発したのである。
幸いけが人はいなかった。
爆発時、電信室に居なかった私は
「匂いに気が付いていたのに逃げた」とみんなから言われた。

