男性があまりにも美味しそうに飲んでいるので、つい声を掛けてしまった。
「美味しいですか?」
するとその男性が麦焼酎のお湯割りをご馳走してくれた。
今日、佐世保に転勤してきたことや、初めて四ケ町に来たことなどを話した。
定食を食べながら聞いていた男性が「行くところがないなら俺に付いてこい」と言う。
食べ終わるのを待って二人で店を出た。
連れて行かれたのは四ケ町アーケード街の中にある「モア」というミニクラブだった。
ドアに「モア」と小さく書かれているだけで、知らない人は入りそうにもない。
19歳(実際は誕生日が来ていないので18歳)の高橋少年にとって初めてのクラブである。
綺麗なドレスを着た若い女性が4~5人いた。
そのうちの一人にボックス席に案内された。
男性はカウンターに座っていた。
どれぐらい時間が経過しただろうか、気が付いたら男性はいなかった。
チーママと呼ばれていた女性に男性のことを訊ねるとメモを渡された。
そこには「女性とお金に困ったら連絡をよこせ」と書かれていた。
なぜか連絡先は書かれていなかった。
チーママはその男性の名前も連絡先も知らないと言う。
料金の支払いは既に済んでいた。
更にリザーブが1本キープされていた。
これが佐世保初日の出来事である。