現在は婦人自衛官が艦艇に乗艦している。
昭和57年当時、艦艇に婦人自衛官はいなかった。
しかし、通信隊には婦人自衛官が勤務していた。
私は館山の通信隊にも当然に婦人自衛官がいると思い込んでいた。
ところが館山は男だけだったのである。
残された期待は、電話交換室である。
当時の隊内電話は、交換室で目的の部署につないでもらう方式であった。
交換室に電話を掛けると、とっても声のきれいな女性が電話をつないでくれた。
声から知的でスレンダーな美人を勝手に想像していた。
ついに交換室での実習の日が来た。
期間は1週間。
期待に胸躍らせて交換室に入った。
8畳ほどの広さで、交換台が2台と休憩場所があるだけだった。
そこに年配の女性が二人座っていた。
お目当ての女性はいなかった。
その日は休みかと思っていた。
年配の女性の一人が交換台の操作方法を教えてくれた。
慣れるまではその女性が補助についてくれた。
私が1本つなぐ間に、もう一人の女性は5,6本つないでしまう。
隊内電話番号が全て頭に入っているのだ。
私は部署名から電話番号を探して電話をつなぐため遅くなってしまう。
時間に余裕が出来た頃、あのきれいな声が聞こえてきた。
そう、隣で電話交換をしている年配の女性がその声の持ち主だったのである。