昭和58年3月25日、雪の残る大湊駅に降りた。
大湊駅は本州北の終着駅である。
何年か前に吉永小百合さんがJR東日本のCMの撮影で降りた駅だ。
一緒に来た同期たちは、同じ艦の人が車で迎えにきていた。
私の迎えはないらしい。
艦隊勤務と地方隊勤務では待遇が違うのかなどと思った。
タクシーで行こうかと考えていると、後ろから声をかけられた。
私を迎えに来てくれたのだ。
「護衛艦おおい」は、艦番号214、昭和39年1月に就役した艦である。
私と同学年ということになる。
艦としてはロートル艦である。
排水量1490トン。
実習で乗った「護衛艦はるな」の3分の1だ。
全長は94mと、護衛艦の中で一番小さなクラスの艦だ。
「はるな」でも船酔いをした私に、一番小さな護衛艦とは、
自衛隊は酷い人事をするものである。
着任の挨拶を済ませて、電信室に向かった。
電信室はこれから私の職場となる場所だ。
ここには2期生の電信長を筆頭に、
17期生、20期生、22期生、23期生がいた。
電信室の半分が生徒出身者ということになる。
これだけでも十分憂鬱である。
更に、通路の壁に靴の足跡がついていた。
聞くと、壁に足がつくくらい揺れるとのことだ。
とんでもない艦に乗ってしまったようだ。
だが降りる訳にもいかない。