掃除が終わるとやっと朝食である。しかし、ゆっくり食べている時間は無い。洗面、トイレ、靴磨きをして、7時45分までに外に整列しなければならない。8時に国旗掲揚をして、課業整列、行進である。月曜日は制服の点検、金曜日は作業服の点検である。
月曜日、整列をしていると班長が私の前に来た。私のベルトのバックルを指さして「なんだこれは!」と言う。「はい!バックルです!」と答える。「そんなことは分かっている!お前のバックルは何で下を向いているんだ?」何を言われているのか分からない。「腹が出てるんだよ!腹が!」「バックルが上を向くまでグランドを走ってこい!」と言われた。グランドと言っても1周700メートルもあるグランドである。初めて見た時は大きな空き地だと思ったほどだ。
課業整列が終わると、やっと授業である。しかし、入ったばかりの私たちは、整列、行進、敬礼、号令の訓練を朝から晩までやらされた。
私たちが整列をしているところに、品のいいおじいちゃんが来た。班長が突然「気を付け!」「かし~ら~中!」の号令をかけた。太い金筋の階級章を制服の袖口に巻いている。校長だ!当時55歳位だと思うが、15歳の私からはおじいちゃんに見えた。そういう私も間もなく55歳である。ちなみに校長は、海軍兵学校出身だった。