夏休みが終わり、また江田島に戻らなければならない。行きたくない気持ち200%である。福島駅まで母が見送りに来た。上野までは夜行で行く。東京からは新幹線で広島に向かう。電車に乗ってしまうと不思議と気持ちが落ち着いた。諦めに似た気持ちだ。
2学期が始まって直ぐに面接があった。呉地方総監部人事課の面接という事以外、何の面接か分からなかった。順番に一人ずつ行われた。普段の生活に関することや、悩みはないかなどを訊かれた。最後に「マーク」は何を希望するのかと質問された。「マーク」というのは海上自衛隊内の職種のことである。私は全く考えていなかったので、とっさに第一希望「運用」、第2希望「航海」と答えてしまった。「運用」とは船体の整備などをする船乗りらしい仕事である。「航海」とは艦橋で航海に関することを行う仕事である。面接官が変な顔をしていたが、無事に終わったと思っていた。
ところが、全員の面接が終わった後で、13班だけ班長に集合を掛けられた。「今日の面接で、運用と航海を希望した者がいる。何を考えているんだ!」と言って怒っている。自分のことだと直ぐに分かった。しかし、何で班長が怒っているのか分からなかった。
私が入校した海上自衛隊少年術科学校は「通信」要員と「水測」要員を育成する学校だったのだ。